ヒーローの復活と死

ダークナイト』観てきました。
今年観た映画では今のところベストです。



バットマン ビギンズ』の続編で、いわゆるオトナのためのアメコミ・シリーズ。いやー、子供向けの原作を、これほどまでにアダルトに仕上げるクリストファー・ノーラン、すんごいパワーです。観てるだけでもつかれるんだから、あれを作品としてまとめ上げた人たちは、とんでもない精神力が必要だったんじゃないかと思います。


シンプルながら観客を飽きさせないストーリー展開はもちろん、なにより度肝を抜かれたのが、今作から満を持して登場したバットマンの宿敵・ジョーカー。これがとにかくカッコイイ。怪演するのは『ブロークバック・マウンテン』で注目されたヒース・レジャージャック・ニコルソンをはじめ、これまでいろんな人が演じてきたジョーカーですが、悪者ながらいつもどことなくコミカルで憎めない部分が残されていました。


が、今回はちょっと違います。コミカルな部分が、笑いにつながらず、すべてサイコでワイルドで危険な香りに直結しているのです。鳥肌立つほどコワイです。んー、あらためてヒース・レジャーはすばらしい俳優だと思いました。が、残念なことに今年2008年1月に他界。死因はOver Doseだとか。享年28歳。ヒースがあんなにぶっ飛んだジョーカーを演じられたのも、もしかしたら荒れた私生活や精神状態あってこそ、だったのかも知れません。


カリスマ不在の世界にあって、ステレオタイプなイメージの量産が繰り返されていた悪役を、現代にぴったりのダークサイド・ヒーローとして蘇らせ、自らはそのまま還らぬ人となったヒース・レジャーアメリカの映画界は、永遠に人々の記憶に残る強烈なヒールキャラを得たと同時に、本当の意味でのスーパーヒーローをひとり失ったのかもしれません。