サイコさん

ずいぶん肌寒くなってきましたが、渋谷にお芝居を観に行ってきました。


次世代クドカン的なかんじで注目されている本谷有希子さんの『幸せ最高ありがとうマジで!』。予備知識なしで行ったので、タイトルからして青春ものか恋愛ものかと思ってたら、とんでもなかった。その語感のさわやかさとは裏腹に、ブラックユーモアの嵐です。すごく楽しめました。



簡単にストーリーを説明すると、ある日、新聞配達屋さんの一家に永作博美扮するヘンな女がいきなり現れます。平凡だけど静かに日々を送ってそうなその家庭を、永作がかき乱しにかき乱す。一カ所つつけば、一家のドロドロした一面がみるみる浮き彫りになって……。まあ、あとは実際に観ていただくのがいちばんイイと思います。というか今のうちに観といた方がいいですよコレ。


永作のヒールっぷりは『Dark Knight』のジョーカーを彷彿とさせました。登場人物のひとりに、この一家に住み込みのバイトで働いてる女の子がいます。で、ここの親父に手籠めにされて、復讐したくてリスカを繰り返したりしながら居ついてる娘なんですが、その傷を見せられた永作、「リスカなんて、精神異常者のトレンドでしょ? 私はもっと明るい精神異常者なの!」と返すんですが、ジョーカーが「カネなんか問題じゃないんだ!」と札束の山を焼き払ってたのとキホン同じですよネ。世の中「甘さ控えめ」なかんじで回りつつありますが、冗談じゃねえ、というような気合いをかんじました。


そして一家のダメ親父を演じる梶原善、そしてダメ息子役の近藤公園の演技がスバらしい。チョイ不良(ワル)だとかイケメンとかがもてはやされる昨今、あれだけのダメ男ぶりを見せつけられると、逆に男としてカッコイイ。「ちょっと」悪いんじゃなくて、もう全面的に悪い。しかもダメなことに本人無自覚です。


ああいうオヤジ、昔はもっといたんだけどなあ。なんて思いながら高円寺に帰って近所のスーパーに買い物にいったら、いました! 店の入口のところに明らかに泥酔したおっさんが仁王立ちしていて、たまたまやってきた若い女性に「あー、またブスだ。ブスはキライだっていってんだろ〜」とブツブツ。うへー、ステキすぎる。たまたま買い物にきた女の人は、見知らぬおっさんにブス呼ばわりされて怒り心頭です。フン! みたいなかんじで店内に消えていきました。なんともシュールな光景ですが、まわりのみんなに敵視されながら、ただ正直な胸のうちを吐露するおっさん、ぼくはあんたを知らないが、心の中で応援してますYO!


こういう日は、セルジュ・ゲンスブールとか『電気グルーヴとかスチャダラパー』の1曲目「聖☆おじさん」なんか聴くと、ぐっときます!