女性ファッション誌の研究

2008年の末、東京のあるところに「最近、女性誌がよくわからんナ」とボヤくおっさんがおりました。某雑誌の編集長です。どうでもいい話題だったので、あついカプチーノをすすりつつ「ふむー、そうですネ」とかなんとか曖昧な態度でお茶を濁していました。すると「もしよかったら調べてくれないか」と来ました。まったく興味のわかない話だったので「今日も天気がいいですネ」などと流してみました。しかし敵はなおも「ギャラはずむからサ!」と執拗です。しかたがないのでカプチーノをお代わりして、いろいろ調べて記事にして送りました。ふだんは他人に記事や写真やイラストを発注し、テーマに沿ってコラージュしたり紙芝居のように構成を考えたり、あるいはどこかに旅に出てトラベローグを書いたり、新しいカルチャーについての取材やインタビューをしたりすることが多いので、こういう「調べる」が98%くらいをしめる仕事、けっこうツライものでございました。せっかくなので怒りも込めて一部をここにも載っけときます。


予習篇


ひとくちに女性誌といっても、ティーン向けから50代向けまで、その数は宇宙に瞬く星の如く無限である。極端な話、中学生向けの『nicola』だって、50代が主な読者層の『婦人公論』だって同じ女性誌なわけで、その中間にどれだけの数の雑誌が存在するか、想像するだに恐ろしい。とにもかくにも調べてみると、現在、日本雑誌協会に加盟する出版社の女性誌は、ファッション系だけでも、約80誌あった。ただ、これにはフリーペーパーや、地方・中小出版社およびインディペンデント系の雑誌は入っていないので、それらも加えれば、実際には軽く200誌は超えると予想される。しかも、読者の趣味とジェネレーションに合わせて、とんでもない勢いで細胞分裂が繰り返されている模様。


○お姉様系or赤字系→『CanCam』『JJ』『ViVi』『PINKY』『Ray』『AneCan』など。
ティーンズ系→『ピチレモン』『nicola』『ラブベリー』など。
○ストリート系→『Zipper』『CUTiE』『JILLE』『mini』『SEDA』など。
○カジュアル系→『non-no』『anan』『spring』『InRed』など。
○モード系→『装苑』『Harpar’s BAZZAR』『High Fashion』など。


これらメジャーどころに加え、ギャル系、ガーリー系、Bガール系、主婦系、ゴージャス系、ゴシック系、パンク系・ロリータ系、そして30代、40代、50代向け雑誌……もうキリがない。なんとなく学研の『小学○年生』シリーズを彷彿とさせるスキのなさだ。


遭遇篇


こんどは本屋に行って、女性誌が販売されている状況というものを確認しなければならない。新宿東口のジュンク堂書店で、女性誌コーナーに寄って、ファッション誌を立ち読みしてみた。それも『Vogue』とか『装苑』みたいなモード系じゃなくて、『CanCam』とか『ViVi』とか、いわゆるお姉様系とかプリカワ系(プリティ&カワイイ系)とか呼ばれる雑誌である。化粧バッチリの読者モデルと極彩色の洋服たちが怒濤のように溢れかえり、その間を縫うようにして、アジテーションみたいなコピーが空間を埋め尽くす。


このカテゴリーは、タイトル・ロゴの色から俗に「赤文字系」とも呼ばれ、読者対象は10代後半〜25歳。エビちゃんモエちゃんみたいな読モ=読者モデルを独自に抜擢してフィーチャーし、カリスマ化させていくのも、この辺りの雑誌の共通点だ。しばらく読んでいると、スーパー・ハイテンションな世界に圧倒されたせいなのか、電話帳みたいな分厚さからくる重量のせいなのか、手がプルプルと震えてくる。ふと気づくと、周りのOL風の女性たちの不信感に満ちた非難がましい視線を一身に浴びていたりして、見てはならない禁書を開いた修道僧のように、あわてて雑誌をパタンと閉じてその場を立ち去るハメになる。たしかに『PINKY』とかを一心不乱に立ち読みする男の姿はかなり怪しい。こういう事態を避けるためには、書店ではなく、コンビニに行くといいことが、後にわかった。コンビニは誰が何を読もうと買おうと気にもとめないし、意外と女性ファッション誌の品揃えがいい。


それにしても、各誌よく似ている。ランダムにパッとページを開いたら、どれがどれだかまずわからない。一昨年あたりからエビちゃんが雑誌で着た服は即完売という状況が相次ぎ、業界ではそれを「エビ売れ」と言うらしい。雑誌が売れれば服屋も儲かる、という構図が完全にできあがっていて、ある意味で健全な状態なのかも知れないが、こうして「なんだか同じ」プリカワ系女性誌が大量生産されていくことになる。ギャル〜コンサバまで微妙にスタイルは異なるものの、各雑誌ともに、限られた時間とカネを有効活用して、いかにモテるか、というコンセプトは各誌おんなじ。そんなつもりはない! と作り手側は言うかも知れないけど、12月号では予想通り、各誌ともにXmasデート特集が組まれていた。これ、毎年やってる気がするんですが、やらないと何かマズいんでしょうか?


とりわけ『CanCam』、『JJ』、『ViVi』などは、あきれるほど共通点が多い。判型もレイアウトもほとんど一緒。ページごとの写真点数も異常に多く、無理矢理詰め込まれた極小のキャプションの解読にはルーペが必要かも。ちなみに『JJ』12月号には1ページに50カットも写真が載ってる場所があった。もはや「ウォーリーを探せ」状態だ。試しにイトーヨーカドーのチラシを横に置いてみたが、まったく違和感がなかった。こんなページを担当してる編集者はツライだろうな〜、と他人事ながら心配になってしまう。『蟹工船』の労働者級にハードで細心を要求される作業の結果、できあがるのは各誌横並びの詰め込みカタログ。編集者のクリエイティビティの代わりにひしひしと伝わってくるのは、関係者の怨念だけ。だから、書店やキオスクにならぶ女性誌を見て、「どれも同じに見える」とボヤくおじさんたち、あなた方の感想は正しい!


プリカワ系雑誌総まくり篇


●『CanCam』(小学館)
創刊/1981年
発行部数/71万5417部
読者モデル/蛯原友里山田優徳澤直子西山茉希など。
○ギャル〜コンサバ風まで、コンセプトは雑多。
○歴代読モは藤原紀香長谷川京子伊東美咲米倉涼子と豪華絢爛。
○合言葉は「めちゃ♥モテ」。


●『JJ』(光文社)
創刊/1975年
発行部数/36万4483部
読者モデル/有村実樹桜井裕美土岐田麗子など。
○ファッションはコンサバ。
○2007年8月号で「『モテる』は卒業!『愛される』夏服」と『CanCam』 への対決姿勢を明確に。
○合言葉は「愛され」「お嬢様」。


●『PINKY』(集英社)
創刊/2004年
発行部数/21万833部
読者モデル/鈴木えみ木下ココ山岡由実、愛未など。
○ギャル路線まっしぐら。
○読モの鈴木えみはドラマ『ギャルサー』にも出演。読者のカリスマ。
○合言葉は「Love服 Loveヘア Loveメイク」。


●『ViVi』(講談社)
創刊/1983年
発行部数/45万3750部
読者モデル/マリエ、長谷川潤、藤井リナなど。
○ファッションはセレブを意識したギャル。
○めざせパリス・ヒルトン。読モはハーフ率が高い。
○合言葉はセレブなビッチで「セレビッチ」。


●『Ray』(主婦の友社)
創刊/1988年
発行部数/24万4683部
読者モデル/酒井彩名松本莉緒、葛岡碧など。
○ファッションは『JJ』よりも甘めのコンサバ。
○ピンクやフリルが大好き。
○合言葉は「プリンセス」と「姫」。


●『AneCan』(小学館)
創刊/2007年
発行部数/30万部
読者モデル/押切もえ、堀内葉子、大桑マイミなど。
○『CanCam』を卒業生した25歳以上のOLが読者対象。
○創刊号は1週間で30万部を完売。
○ミーハーかつ大人っぽい「Aneベーシック」がコンセプト。


番外編 女性誌用語の基礎知識。


エビ売れ
CanCam』のカリスマ読者モデル、蛯原友里が雑誌で着た服が全国的に即完売してしまう現象を指す業界用語。発信地は『CanCam』編集部内と言われる。


【プリ通】
プリンセス通勤。かわいい服を着て通勤すること。『JJ』では定番コトバとして、エクスキューズなしで連発される。スーツではないOL服が主流。


【サバカワ】
「コンサバ」だけど「カワイイ」を表す造語。伊東美咲矢田亜希子長谷川京子竹内結子がサバカワ四天王とされる。(『Style』)


【シンプリティ】
「シンプル」で「プリティ」な女子大生スタイルの総称。(『JJ』)


【レオパー女(ジョ)】
ヒョウ柄服に身を包む女性。主に派手好きな関西の学生に多く見られ、同地ではレオパード柄は入荷するとすぐ売り切れるとか。(『JJ』)


【ロママリン】
「ロマンティック」な「マリン」。夏の特集などで女の子らしい小物やアイテムを取り入れたマリンルックを指す。(『ViVi』)


【アラサー】
アラウンド・サーティ=30歳前後の読者層をもつ雑誌のカテゴリー。『CanCam』や『JJ』を卒業した女性がここに流れる。カワイイだけでなく、グラマラスでモードな色を打ち出した雑誌が多い。今年の流行語大賞に選ばれた【アラフォー】も発祥はドラマではなく女性誌


【サロネーゼ】
自宅でワインや料理、フラワーアレンジメント等の教室を開く優雅な奥様を指す。「シロガネーゼ」を生んだ『VERY』用語のひとつ。


【もてぷよ】
40代以降の、おなかや二の腕がぷよぷよしてきた女性に、やせろとか鍛えろとか言わず、その状況に合わせて提案される最善のファッションとスタイル。(『STORY』)


【マリナーゼ】
千葉県浦安市の高層マンションで暮らす奥様方。漫画『奥さまはマリナーゼ』のヒットから、『In Red』など雑誌にも登場しはじめた。


【コマザワンコ】
駒沢公園の徒歩圏内に住む女性たち=コマザワンヌが連れている愛犬を指す。飼い主たちは公園内のカフェで愛犬の写真入り名刺を交換し合う習性アリ。(『In Red』)


艶女(アデージョ)】
NIKITA』がめざす女性像で、そのイメージは、歴代のボンドガール、『ルパン三世』の峰不二子、『銀河鉄道999』のメーテル。類義語として艶男(アデオス)、柄美人(ガラージョ)、柄美脚(ガラシアータ)などがある。仮想敵としてコムスメ、派手婆(ハデーバ)、地味女(ジミータ)。


【リッチェレ】
「リッチ」かつ「エレガント」な女性またはファッションを指す。(『JJ』)


【セレビッチ】
セレブでビッチなファッションや人。ホットパンツ、ブラ見せ、ド派手ネイルなど、パリス・ヒルトンのように、セレブだけどやんちゃでセクシーな雰囲気を至上とする。(『ViVi』)


【コソ練】
流行のメイクや着こなしを、一人でコソコソと練習すること。最近は女性誌に限らず使用される傾向がある。


【ゼロマイル服】
近所に着ていく服。類義語として「ワンマイル服」も。(『VERY』)


【モデリッチ】
モデルのようにリッチなスタイル。カジュアル服にリッチアクセや流行小物を合わせた、モデルの私服みたいな服。(『ViVi』)

焚き火の月

もう12月。


クリスマスになると届くのが、都築響一さん主宰のパーティの案内です。ふだん接点のない出版社の方と交流できて、楽しいお酒が飲めるよい機会だったのですが、哀しいことに昨年で会も一旦終了。今年はどうやって過ごせばいいのか一瞬ぼんやりしてしまうです。まあ仕事してお酒飲んで、気づくと終わってるんでしょうけど。その案内状がまた楽しかったんです。


もろびとこぞりて〜〜というわけで欧米諸国も、おとなり韓国だってクリスマスは国の祝日。なのに日本も中国も(それに北朝鮮も)、12月25日はタダの平日。イヴも休みにしてくれたら、23日の天皇誕生日から3連休になるのに。つまんないですねー。というわけで年末恒例の忘年会、今年は「キリストさま生誕をお祝いしたいのに、仕事しなくちゃなんない!」とお嘆き、お怒りのみなさまをお迎えして、25日に開催します。仕事も大掃除も年末進行も、全部忘れちゃって大騒ぎしてください!」


「もう年末!今年もやります忘年会!俺には(私には)聖夜も性夜もない、とお嘆きのみなさま、大変なことばっかりだった年なんて忘れちゃいたい人、年じゃなくて歳のほうを忘れちゃいたい人、みんな人生いろいろでしょうが「男もいろいろ 女だっていろいろ 吹き乱れるの♪」と、人生の大先輩・島倉千代子さんもおっしゃってます。今年の最後の最後に、年も忘れて、歳も忘れて、みんなで飲んで騒いで咲き乱れちゃいましょう!」


毎年、こういうテンション高めの案内状がメールボックスに届いてたのが、今年はないのがちょっと寂しいデス。それにしても、読み返してみると、出版関係の人間がいかに馬車馬のように働いてるかがよくわかりますな。ヤクザさまを貴重な情報源とされてる某大衆誌の編集者の人なんて、関西に帰省のついでに山口組の餅つき大会にも参加しなきゃいけないんです、とお嘆きだったのを思い出します。こ、こわっ。

あいたい人

なんだか歌謡曲の名前みたいなタイトルで恐縮なのですが、「会ってみたい人」というのが年代別にいるとすれば、子供の頃は絵本やアニメや特撮モノの主人公だったり、中高生になるとミュージシャンや俳優や作家だったりすることが多いんでしょうか。あるいは、麒麟の田村みたいに、肉親に会いたい、というケースもあって、それこそ1万人いれば1万色の「会いたい」があるんじゃないかと思います。


今のぼくにとっては、ここ2年くらい愛読してるブログを書いてる人が「会ってみたい人」でありました。暖かみのあるブログです。無味乾燥な文体が溢れるネットの世界にあって、ブログはパーソナルな色が出やすいメディアではありますが、読んでいて心がホッとするブログに出会ったのは初めてでした。最新情報がたくさんあるわけではありません。暖かい視線・目線で綴られたブログです。正直、どうにもネット上の文章は無責任なかんじがして好きじゃなかったのですが、そのブログだけは、素直に「好きだなぁ」と思えました。


縁あってそのブログを書いてる人と、チャットで話ができるようになりました。まるで昔からの知り合いのようになんでも話せる不思議な魅力をもったお人であることがわかりました。もしかすると、気を遣わせているだけなのかも知れませんが、少なくともぼくにとってはそうでした。いつか一緒にご飯でも食べられる機会があったらいいナ、と想っていたところ、そのムリなお願いに応えていただき、先日ようやく3人で食事をすることができました! これは嬉しい! 


ネットを介して仕事を抜きにしたコミュニケーションの末に、実際に人にお会いする経験は初めてです。編集の仕事はチームプレイなので、必然的に人とのかかわりが多くなる職業です。取材に行くことも多く「はじめまして」の場面も非常に多い。でも、同じような職種だったり業界だと、ある程度人となりが予想できる場合が多いし、取材に行く場合も事前に取材先を調べていくわけだから、未知との遭遇とまではいきません。


だから今回は、ここ何年かで最大の緊張でございました。きっと向こうはもっと緊張されてたことと思います。気軽に誘ったりした自分がちょっと恥ずかしくなりました。なにしろブログとチャットしか手がかりがありません。ポケットの中にある心許ない武器は、ぼくがその人のことをとっても好きだ、という想いだけ。でもお会いする方には、ひのきのぼうすらないわけですからね。


でも、いざ実際に会ってみると……。予想通りとってもチャーミングで、かわいらしいお人。なにしろ大ファンですから感動のあまり会ってる間じゅう、じいーっとお顔を見つめてしまいました。失礼だし、もともと無表情なほうなので、怖がらせてしまったんじゃないかと反省しきり。ゲームの話も楽しかったし、ワインもおいしかった!


もっといろいろお話したいな、と思いました。ぜんぜん時間がたりないYO! 寒い毎日だけど、心があったかくなった一夜でした。


また遊んでくださいね!

そうだ、京都に観光に行こう


というわけでやってきました秋の京都。観光じゃなくてインタビューのお仕事です。ええ、ええ……。先月も来ましたが、そのときはサントリー山崎蒸留所に直行・直帰だったので、市内はスルーでした。今回はちゃんと京都のど真ん中に降臨できて嬉しいことです。駅から市内へと向かうタクシーの運転手さん曰く「紅葉がいちばんいいのは来週です」とのこと。それでも街路樹も山肌もしっかり彩りをまとっていました。


車窓から艶やかな色に染まった嵐山や、陽をあびて輝く鴨川を眺めつつ、ふと車内に目を戻すと、そこにはむさくるしい男ばかり4人がぎゅう詰め。まさに出会いのない職場の縮図といっていいでしょう。ちなみに編集の仕事をしていると「出会いが多そうでいいですね」なんて言われたりしますが、それは偏見ですYO! まあ、インタビューが出会いの場になってるスポーツ選手と女子アナのような例もありますが、あれはいかに選手と仲良くなって独自情報を引き出すかというグリーンベレーとかSASみたいな特殊部隊であり、『ラスト・コーション』みたいなものなので、あんまり参考にはなりませんデス。


さて、取材まですこし時間があったので、全員を説き伏せ、イノダ・コーヒに向かいます。もちろんコーヒーが飲みたいというのもありましたが、学生時代からずーっと使っているイノダの灰皿がもうひとつ欲しかったのです。鉄製とアルミ製があり、長年愛用しているのは鉄製です。フォークロアというか小学生が粘土で作ったような素朴なデザインも好きですが、クソ重いのでまずひっくり返す心配がないのが◎。同行していたかつてのボスの「さては観光気分だな」とのイヤミを無視して、イノダの灰皿がいかにスバラシイか車中で演説していたら、あっという間に到着。今回みてみたらアルミの銀色の趣も悪くないな〜、とアルミ製を購入しました。



これがイノダ・コーヒの灰皿(1,800円)。


無事インタビューを終え、高瀬川のほとりにある安藤忠雄TIME'Sでお茶したり原了郭の黒七味買ったりして帰京。まるで観光じゃないか! 男ばかりの京都旅はこうして終了しました。となりに座ってるのがガールフレンドだったりすれば長い車中も楽しいんでしょうが、むさくるしい男たちとの列車旅はどうしてこうも長いのか。新幹線、もちっとスピードでないのかなー。ちなみに上海にはリニア・モーターカーが走ってて、最高時速430キロで空港と市内を結んでます。市内の真ん中まで行かないから、あんまし便利じゃないけどね!


TIME'S。カフェでお茶もできます。


旅ゆけ〜ば〜三日〜月〜♪

寒いよお。


あったかいコーヒーと、ヨハンのチーズケーキなんかを楽しみに生きております。ちなみにぼくは世の中のチーズケーキの中でここのが一番好きですだ。うーん、そろそろ去年クリーニングに出してたダウンとか出してみようかなー。寒すぎるのはイヤだけど、それはそれで楽しみ!


土曜日の朝、新宿からリムジンバスにのって、成田空港に向かいました。海外に行くためじゃありません。空港そばのホテルで、ふるい友人のケッコン披露宴があったからなんです。ふえー、遠いよ! スーツ着るのは一年に一回くらいなので、なんだかおめかししてる気分でうれしい。でも着慣れてないからあいかわらず似合わないのが哀しいところです。成田空港にいくときはいつもこのバスにのりますが、車窓から見える景色がスンバラシイ。東京タワーもばっちりみえるし、なんとかブリッジ通ってお台場までいくと、テンションかなりあがります。外国人の友達が遊びにきたとき、モノレールとならんでむりやり乗せる交通機関のひとつです。脱線しますが、これまでの経験では外国人の友達がいちばん喜ぶ場所は歌舞伎町とスーパー銭湯でした。


さて、披露宴は、とてもあったかくてよい雰囲気のなかで無事終了。新婦と父の感謝のコトバには、円卓の1/3が号泣しておりました。地元、旭市のお囃子軍団とかも飛び出して、それは楽しい一日でした。Sちゃん、とおいカンザス州に行っても元気で、お幸せにネ。なれるまで何かと大変だろうけど、なるべくニコニコ笑って毎日すごしてほしいな。



イニシャルトークを台無しにする一枚。


ビールで身体もあったまって、再びリムジンバスで新宿に戻ります。西新宿のビル群がキラキラ輝いていて、心がおどります。ふにゃー。家に帰ってコーヒーいれて、引き出物でいただいたバウムクーヘンをさっそく。おいしかった〜。


それにしても、日帰りで都内から成田まで行っただけなんですが、とってもいい旅ができた気分です。世の中にはいろんなパッケージの旅がありますけど、あわただしいのがイヤなぼくにはこういうのんびりした旅の仕方がおもしろいですだ。旅行代理店の人、そういう切り口でひとつおもしろいの企画してください!


【季節はずれのカボチャ便り】

あまりのかわいさに衝動買いしたハロウィンのお菓子。あげる子供がいない!

サイコさん

ずいぶん肌寒くなってきましたが、渋谷にお芝居を観に行ってきました。


次世代クドカン的なかんじで注目されている本谷有希子さんの『幸せ最高ありがとうマジで!』。予備知識なしで行ったので、タイトルからして青春ものか恋愛ものかと思ってたら、とんでもなかった。その語感のさわやかさとは裏腹に、ブラックユーモアの嵐です。すごく楽しめました。



簡単にストーリーを説明すると、ある日、新聞配達屋さんの一家に永作博美扮するヘンな女がいきなり現れます。平凡だけど静かに日々を送ってそうなその家庭を、永作がかき乱しにかき乱す。一カ所つつけば、一家のドロドロした一面がみるみる浮き彫りになって……。まあ、あとは実際に観ていただくのがいちばんイイと思います。というか今のうちに観といた方がいいですよコレ。


永作のヒールっぷりは『Dark Knight』のジョーカーを彷彿とさせました。登場人物のひとりに、この一家に住み込みのバイトで働いてる女の子がいます。で、ここの親父に手籠めにされて、復讐したくてリスカを繰り返したりしながら居ついてる娘なんですが、その傷を見せられた永作、「リスカなんて、精神異常者のトレンドでしょ? 私はもっと明るい精神異常者なの!」と返すんですが、ジョーカーが「カネなんか問題じゃないんだ!」と札束の山を焼き払ってたのとキホン同じですよネ。世の中「甘さ控えめ」なかんじで回りつつありますが、冗談じゃねえ、というような気合いをかんじました。


そして一家のダメ親父を演じる梶原善、そしてダメ息子役の近藤公園の演技がスバらしい。チョイ不良(ワル)だとかイケメンとかがもてはやされる昨今、あれだけのダメ男ぶりを見せつけられると、逆に男としてカッコイイ。「ちょっと」悪いんじゃなくて、もう全面的に悪い。しかもダメなことに本人無自覚です。


ああいうオヤジ、昔はもっといたんだけどなあ。なんて思いながら高円寺に帰って近所のスーパーに買い物にいったら、いました! 店の入口のところに明らかに泥酔したおっさんが仁王立ちしていて、たまたまやってきた若い女性に「あー、またブスだ。ブスはキライだっていってんだろ〜」とブツブツ。うへー、ステキすぎる。たまたま買い物にきた女の人は、見知らぬおっさんにブス呼ばわりされて怒り心頭です。フン! みたいなかんじで店内に消えていきました。なんともシュールな光景ですが、まわりのみんなに敵視されながら、ただ正直な胸のうちを吐露するおっさん、ぼくはあんたを知らないが、心の中で応援してますYO!


こういう日は、セルジュ・ゲンスブールとか『電気グルーヴとかスチャダラパー』の1曲目「聖☆おじさん」なんか聴くと、ぐっときます!

中華料理のこと

グフゥ……先週末は飲んでばっかりいて、週明けから死んでおりました。


木曜日は表参道の〈Red Pepper〉。知り合い4人と。うち2人は下戸だったため2人でビールと赤白ワイン2本。プリン体が一気にたまりそうなプリプリのフォアグラがヤバイほどうまい。金曜日は恵比寿の〈欣来〉。別の知り合い4人と。またもやウーロン茶野郎が2人混じっており、ビール散々と紹興酒。ここは初めて連れてってもらった中華屋でしたが、最高です! キャベツの塩炒めが絶品です。土曜日は友人たちがウチに遊びに来たので、焼きそばとか白菜と豚バラの重ね蒸しとかネギのサラダとかつくって、焼酎さんざん。


いやー、楽しかった……楽しかったけど、身体はつらい。でもまあ、改めて思ったのは、たまにフレンチとかイタリアンもいいけど、やっぱ中華はおちつくなあ、ってことです。和食でおちつくならわかるが、なんでそんなに中華でほっこりしてるのかというと、以前、中国に住んでいた経験が大きいと思われます、ハイ。


どうでもいい独白っぽくなるんですが、ぼくは大学を卒業して、4年ほど上海に住みました。まわりがみんな就職活動を一生懸命してる横で、ぼくがやってたのは移住の準備です。にわか社会人みたいになっていく学友たちのことを、当時はアホじゃないかと思って見てましたが、今思えばアホはぼくだったことがよくわかります。まあ、前置きはいいとして、とくになぜ上海を選んだかというと、当時、雑誌でみかけた上海市内の写真にいたく心ひかれたからです。その写真は、古い街が解体というかぶちこわされ、近未来的なビルがにょきにょきはえていく様子を写したものでした。そういう破壊と再生がリアルタイムで進行してる街に住んでみたいなー、と思ったわけです。若くて浅はかだけど、勢いだけはあるので、さっさとチケットをとって、ある夜、上海に飛び立ちました。


そういうわけで気づくと4年も中国にいたわけですが、イヤー、行ってみるもんですね。楽しかったです、やっぱり。見るもの聴くもの出会うもの、すべて新鮮。半年くらいで中国語も日常会話くらいは困らなくなって、あちこち旅行して回ったり、まあ気楽なものです。さて、中国に住む以上、食べものはやっぱり中華料理がメインになります。それまでも中国料理は普通に好きだったけれど、とくに興味があるわけじゃありませんでした。でも、各地でいろんな料理に出会っていくうちに、その奥深さにどんどんハマっていきました。


月並みな表現ですが、本場の中華はやっぱりちがうんです。長江以北と以南ではまず主食がちがいますし(北は麦、南は米)、味付けも北はしょっぱくて、南は甘い。重慶とか南西部の方は「朝天椒」という丸っこい唐辛子を多用した、とてつもなく辛い料理が多くなる。四川なんかは「麻」(痺れる)という甘い、辛いを超えた味も登場します。広東は蛇とかアルマジロも食べるし、場所によって、ホントにオモシロい料理がわんさかあります。


そういえば、日本で有名な麻婆豆腐とかエビチリとかでも、中国で食べると別物です。どっちがイイとか悪いとかじゃなくて、ちがうんです。ただ、おもいっきりちがう例もあって、たとえば担々麺。四川の担々麺はスープのない和え麺です。素材、水、空気、雰囲気。要因はいっぱいあるだろうけど、本場の料理は、本場の環境ではじめて最高のパフォーマンスを発揮できるようにできてるんだと思います。海外で食べる日本料理が、どうしても日本で食べる和食とは違ってくるのと同じですネ。


まあそういうわけで、ぼくは今でも中華料理を食べるのがとても好きなんです。ちなみに、ぼくがいちばん好きな中華は、蕃茄炒蛋(卵とトマトの炒め物)です。シンプルこの上ない家庭料理なんですが、もうホントにおいしい。帰国後、何度も作ってみてるんですが、なかなかあの味を再現できずに今に至ります。でもまあ、ここまで日本の家庭料理に浸透している外国料理は中華以外にないんじゃないでしょうか。餃子、ラーメン、春巻、麻婆豆腐、酢豚。それまでふつうに食べてた中国料理も、もちろん大好きです。日本人の好みに合わせて発展したものですから、まずいわけがありません。ラーメンなんて、もう中華の範疇からすっかり飛び出しています。日本の寿司もそうですが、世界中で自由に食べられてる料理って、なんか夢があって好きです。


ということで、今年も上海蟹、はやく食べたいなー。